第一話 薄珂と立珂の日常【前編】②

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第一話 薄珂と立珂の日常【前編】②

「……腸詰は……?」 「ふふ。この後お昼食でご用意いたしますよ」 「もう昼だ。起きれるか?」 「ん……起きる……」  立珂はとろんとした目をくしくしと擦りながらのそのそと身を起こした。  しかしまだ意識は眠っているようで、羽の重みで身体がぐらぐらと揺れている。薄珂は抱きしめるように支えると、赤ん坊をあやすようにぽんぽんと腹を軽く撫でてやった。 「まだ寝るか?」 「ううん。起きる。起きた」 「よし。じゃあ着替えて歩く練習に行くぞ」 「お着替え! 蒲公英色のお袖が長いやつがいい!」  着替えというと立珂は突如覚醒した。目をらきらと輝かせ、期待に満ちた目で彩寧を見つめている。 「向日葵色のも仕上がってますが蒲公英色でよろしいですか?」 「そうなの!? じゃあ向日葵!」 「最近は黄色がお気に入りだな、立珂は。青は飽きたのか?」 「黄色は顔色が良く見えるんだって。僕って肌まっしろだから黄色にするの」 「白くて綺麗じゃないか」 「僕はいやなの」  立珂は天藍に服を貰って以来お洒落に目覚め、着替えを楽しむようになっていた。  侍女があれやこれやと生地を持ってきて立珂用に作ってくれるので日替わりで色々な服を着ている。最近は難しい色の名前も覚え、既に薄珂は追い付けなくなっている。  そして立珂は新しく仕立てられた向日葵色だという服に着替え、薄珂はお揃いで深緋とかいう色違いの物を着て着替えが完了した。
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