3#あるアオウミガメの生い立ち

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 ・・・・・・  ・・・・・・  アオウミガメのノルンは、この海岸の近くのウミガメ保護施設の『ウミガメ館』で生を受けた。  ノルンは、人間の手で人工孵化によって産まれた。  だから、ノルンは親ウミガメの顔を知らずにスクスクと育った。  同時に人工孵化によって産まれた夥しい数の子ガメ友達と共に。だからノルンは、他の子ガメ友達と親密な関係となり、子ガメ友達がアオウミガメのノルンにとって全てだった。  更に親代わりになったのは、このウミガメ館の人間のスタッフ達だ。  それは、他のウミガメ友達にとっても同様だ。  泳ぎ方から餌の捕り方、敵からの逃げ方は皆このウミガメ館の人間のスタッフから刷り込まれていったのだ。  無論、アオウミガメのノルンと他の子ガメ友達はウミガメ館に居る事により命を狙う並みいる天敵から護られ、毎日がウミガメ天国のような素晴らしい日々を過ごしていった。  やがて、  「バイバーイ!」  「達者でなー!!」  「サメやシャチや海鳥に気を付けろよー!!」  いよいよウミガメ館に護られた日々は終わり、子ガメ仲間達は海岸から次々と様々な試練が待っている大海原へ旅立っていった。  そして、子ガメのノルンもまた・・・  海岸から旅立って日にちが過ぎていくうちに、子ガガメのノルンと子ガメ仲間達は成長して立派なアオウミガメになった。  何とか海藻の食べ方や天敵からの回避に手慣れてきて、悠々と大海原を泳ぐアオウミガメのノルンは彷徨いの途中でウミガメ館で一緒に育った仲間とも何度も出逢い、時にはライバルとして闘い、時にはお互い助け合いながら過ごしていった。  この広大な大海原の海流に乗って、何時はあの生まれ故郷の『ウミガメ館』のある海岸へ戻って新たは命を育む夢を持ち続け、  延々と冒険をしてきた。  そして、やっと、  やっと、生まれ故郷に・・・  皆と戻ってきた矢先に・・・    ・・・・・・  ・・・・・・  「僕は・・・やっぱり裏切られたんだ!!  僕は人間に護られる事は無かったんだ!!  僕らはいったい何をしたっていうんだ!!」   アオウミガメのノルンはキッ!!と『ウミガメ館』の建物を睨み付けた。
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