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明晰夢
目の前に少女がいる──。
廣瀬 和磨は自分が夢の中にいるのだと悟った。
幼い頃から“明晰夢”を見ることの多い彼は特段驚くことなく夢の続き見る。
「カズマくん、あのね……」
麦わら帽子をかぶり白いノースリーブワンピースを纏ったショートカットの少女。少しぽっちゃりとした小学校低学年位の娘は真っ赤な顔をして目を潤ませている。
「わたし、ね……カズマくんのことが、すき……なの、」
震える声でつっかえながらも自らの想いを告白する少女。そして彼女はツーと涙を流しながら笑う。
「おおきくなったら、わたしのことむかえにきて。ずっとまってるから。カズマくんのことずっとだいすきだから」
少女は返事を待っている様で、“さて、なんと答えたものか”とカズマは思案する。
明晰夢は夢の内容を自分である程度コントロールすることが出来るので、意地悪を言って少女を困らせてやろうと思ったのに……。
「わたしといっしょにいてくれるって、やくそくして……」
少女はそう言ってフッと姿を消した。それと同時、カズマも目を覚ます。
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