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 朝から里はにぎわっている。すでに御馳走(ごちそう)の匂いが辺りにたちこめ、人々は酒を飲み、楽器を奏で、踊ったり歌ったりしている。  お祭りは夏に行われる里の一大行事だ。氷におおわれた冬が長いから、夏を盛大に楽しむ。お祭りの最後には花火もあがる。  私はお祭りのなかで花火が一番だと思う。打ちあげ役が競って趣向を凝らすから、毎年どんな色や形や大きさの花火があがるか考えるとわくわくしてくる。  お祭りが佳境にはいる夕方近くになって、私は飛んだ。イレーネをでむかえるために。いっしょに花火を観る夜のことを妄想して、顔がゆるゆるになる。  リボンのレースが風になびき、胸はざわざわと……?  ざわざわ? しかも、なんだか締めつけられるようで息苦しい。 「あ」 「やあ」  違和感に空中停止したら、セージとでくわした。草がはいったカゴを箒の()に吊るしながらふらふらと。  自分から近づくなといった手前、気まずい。 「薬草?」 「うん。これでオッサンたちの酒酔いを緩和できるからね」 「そう。じゃあ、がんば……」  視界が暗転した。胸が全身が燃えるようにひりつき、頭もくらくらと回りだした。  必死に箒にしがみつくも、落ちていく。鈍くなっていく感覚に、セージの声が、イレーネの声もかすかに聞こえた。
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