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 私が(ほうき)で空を飛ぶと、セージはついてきた。 「ねぇエリス、今日は学校休みだよ。なにしに行くの? ねぇってば!」  呼びかけを無視して、私は速度をあげる。夏草茂る里の田園風景が緑一色となって流れだす。  彼は不器用な魔法使い。魔術力が優秀な私には追いつけまい。  なのに、声は耳に届き続ける。  より大きな声をだしているのだろう。里全体に響きそうな大声だ。もしかしたら魔物警報と勘違いして慌てて火炎魔法を発砲して家を壊す魔女がいるかもしれない。  迷惑になる前にと、しかたなく停止して振り返る。  声を張りあげながら危なっかしく箒を操作するセージは嬉しそうに近づいてきた。まるで尻尾を振ってくる人懐っこい小ウルフだ。けど、私の気持ちは決まっている。 「もう私に近づかないで」  小ウルフはしょんぼりし、何かいおうとした。私はそれを制する。  同じ里で共に育ったからか、魔物に襲われるのが不安だからか、いつまでも私にべったりでは困る。もうすぐ魔術学校も卒業するというのに。 「卒業しても私といっしょにいるつもり? それは無理でしょ。そろそろ自立しな」 「うん……そう……だね」  しょぼくれた魔法使いは、ますますしょぼくれてふらふらと下降していった。  これでいいのだ、とにんまり笑う。  ふと、胸にひりつくものを感じた。胸に手を置くと、いつもどおりの鼓動を続けている。きっと、気のせいだろう。  箒を握りしめ、再び風となり、ローブがはためく。学校がある学園都市へと飛ばす。
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