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覚醒
俺は昔、神だった。
つい最近、俺はそれを思い出した。何の拍子か、急にこの世の何もかもが理解出来たのは、神だったからだろう。
この世を構成する物質然り、それによる物理法則もまた然り。当然だ。これらは俺が創り出したものなのだから。
俺のこの知識を用いれば、世界共通の問題であるエネルギーや戦争、貧困も全て解決出来るだろう。
だがしかし。それでも分からない事が俺にはある。それもかなり、たくさんある。俺が人間になったのは、多分それが原因だ。なんとなくだが、それは分かった。
俺は人間の事が知りたかったに違いない。幾度となく人類を滅ぼしてきた俺にとって、その度に必死で抵抗する戦士たちの気持ちが理解出来なかったのだ。
過去に3度、俺の地上侵攻を食い止めた人間たちがいた。救世主、或いは英雄、そして勇者などとも呼ばれた二人の男と一人の少女。確か名は【エル・ストラトス】、【オズワルド・アヴァロン】、そして【東条愛】……それぞれ、膨大な魔力をもって俺の眷属を屠った怪物たちだ。
なぜ彼らや彼女は、こうまで俺に逆らったのか? 脆弱な人間の身でありながら、神々の頂点でありこの世界の創造主である俺に、なぜ勝ち目の無い戦いを挑んだのか? 直に戦った事があるのは一人目のエル・ストラトスだけだが、二人目も三人目も、ぼろぼろになり絶望に叫び、それでも俺の眷属最強のニ神【戦女神ヴァルキュリア】と【軍神マルス】を打ち倒した。
その姿に、俺は感動したのだ。
自分で創り出した人間たちの、生命の輝きに⸺。
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