Happiness

2/11
前へ
/11ページ
次へ
(めぐみ)! お腹空いたわ。何か作って」  両親が出掛けた後の家の中。  当たり前のように命令する姉の(あや)。私のことは自分の世話係だとしか思ってないものね。あんただけじゃないけど。  本来保護者()がすべき筈のことまで、安易に私に押し付けてた。  所詮、私のすべては姉のためでしかない。両親にとって、『娘』は綾ひとりなんだから。 「ちょっと! 何無視してんのよ! 聞こえなかったの? 早く……」  ドアの前の廊下で待ち構えてたのを黙ってかわして自分の部屋に入ろうとした私に、車椅子の豚が金切り声で喚く。  うるさいんだよ。  素早く向き直り、いきなり綾の両腕を掴んで全力で引いた。不意を突かれて身構える暇もなく勢い良く廊下に投げ出され、一瞬我が身に何が起こったかわからなかったみたい。 「な、なに、何すんのよ! お父さんとお母さんが帰って来たら言いつけてやるから! そしたらあんたなん──」  無言で思い切り腹に蹴りを入れられて、反射的に身体を丸めて咳き込んだ綾は信じられないといった表情を浮かべた。  普段は決して逆らうことなく、ただ親や自分の言いなりの私の豹変に。  ああ、足の甲が痛いわ。こんな奴のためにバカらしい。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加