Happiness

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「好きにすれば? あいつらが帰って来るまであんたが持てば、ね。」  初めての呼び捨ての威力か、口の片端を上げた私の笑みに不穏なものを感じたのか。  廊下に無様に転がったままの綾が不安そうに視線を彷徨わせ始めた。  助けがなければ逃げ出すことすらできない無力な己にようやく気付いたらしい。ここには、私以外に味方なんて誰もいないことにも。  相変わらず頭弱いねぇ。 「なんで……、どうしたの? あたしがなに、何を」 「何を!? 逆に訊きたいわ。あんた、私に好かれるようなことを何か一つでもした? 私が生まれてからの十七年間で」  無表情で告げた私に、綾は何も返せないようで口を噤んだ。  今まで、私の行動が『善意』から来るものだと信じていたとでも?  たまには自分で考えたら? そうやって自堕落に生きてるから、ますます人間から遠ざかって行くんじゃないの?  あんたがのうのうと生きる意味なんて、何かひとつでもあるなら訊きたいわ。  ……あるのなら、ね。 
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