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せめてこの能無しクズ女が私に「許して」とでも言えたら、ちょっとくらい待ってやってもよかったのに。
まあ許す気は一切ないから、恐怖が長引くだけなんだけどさ。そのほうが楽しかったなぁ。
自分が許されないなんて考えたこともないんでしょ? 本能だけで生きてる動物も同然だもんね。形だけは人間みたいだけど。
血の気の引いたその顔を一瞥し、まず私はすぐ傍の玄関へ行って靴を履く。
唯一持ってる、スニーカーじゃないしっかりした靴。太いヒールのローファー。
「学校で必要なの。きちんとした席には革靴じゃないとダメで……」
そう頼んでなんとか買ってもらった。
本心では私のために金使いたくなんかないだろうけど、『姉に寄り添う優しい妹』が靴も買ってもらえないなんてバレたら外聞悪いもんね。
そのまま土足で廊下に上がって、わざと高らかに靴音鳴らしながら今度はキッチンを目指す。
早足で戻ると、綾は腕の力で這いずって車椅子に乗ろうとしているところだった。
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