Happiness

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 背後から肩に右手を掛けて引き剝がし、再度廊下に叩き付ける。  半端な体勢だったせいで、力入れる必要もなかったわ。  車椅子は玄関先へ向かって思い切り蹴り飛ばした。いま左手は塞がってるから。  もぞもぞと身体の向きを変え、床に両手をついてのっそり顔を上げた綾が、私の手にした包丁に目を見開く。叫ばれると鬱陶しいので、間髪入れずに靴底で顔面を蹴りつけた。  ヒールで歯だか鼻骨だかが折れたかもね。鼻と口から血を流してる、涙でぐちゃぐちゃの顔の見苦しい女。  胸元を蹴って踏みつけ強引に横たわらせてから、その胸に両手で握り直した包丁を突き立てた。胸だけじゃなく腹にも、幾度となく繰り返し勢いよく刺しては切り裂く。  綾の口から出るのは、もう言葉にもならない声と吐息。  血と脂で柄の滑る包丁を適当に放り投げて立ち上がる。血みどろの腹に、私は力の限り何度も(かかと)を落とした。  耳に届く粘着質な、でも最高に爽快な音。  高揚した気分で、私は綾の裂かれた腹からはみ出たを両手で掴んで引き千切った。
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