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ドアを開けて、靴下だけの裸足で家から出た。
外廊下をまっすぐ進み、マンション一階の一番端にある非常階段を上がる。少しでも上に行かないと。
最上階まで一気に辿り着いてふと足元を見ると、コンクリートに染みのような掠れた赤黒い跡。汚らしい畜生の血だ。
ここまで歩いて来た廊下や階段にずっと付いてるのかな。かえってわかりやすくていいかもね。
目に見えるものが何よりインパクトが強いのよ。
周りの連中が、今まで気づかなかった、それとも知らん顔してた後ろめたさを誤魔化すのにちょうどいいでしょ?
「これまでは知らなかった。見たこともなかった」って言い訳に使うには最適じゃない?
正義の味方になりたくてうずうずしてる『普通の人』なんていくらでもいるもの。
どれだけ汚したって気にする必要もなくなった。
私はもう掃除しなくていいんだ。あの家の中の血も、肉の塊も。
実の娘が、姉である娘を殺した。何かの弾みで思わず、なんてものじゃない、まさに惨殺。
この先、あいつらに待ってるのは何かしらね。
身体の不自由な姉を、妹が献身的に支える。理想的な仲良し家族。
これまで精一杯演出してきたそんな美談が、一瞬にして綺麗さっぱり崩れ去る気分はどう?
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