28人が本棚に入れています
本棚に追加
サクラとあれこれ練習してから、俺は部活へ行った。
もう、どうにでもなれと思いながら力任せにクロールしていたら、ゆるさない君が現れてパンパンパンと手を叩き
「サル。ストップ! 身体を捻り過ぎだ。そこまで捻ると動きにロスが出る。人生は短い。すべてにおいてロスを極限まで減らす工夫が大切だ。入学早々に妹を仕留めた早業には感服した。その調子で人生をスイスイ泳ぎ切ってくれよ」
と言う。
俺が返答に困っていると、ゆるさない君はプールに飛び込んで俺に抱き着き耳元で囁く。
「両親のことは僕に任せておけ。僕はサクラのためなら命を捨てても惜しくない。それくらい真剣に妹の幸せを願っている。僕の弟になるつもりなら、絶対にサクラを泣かせるなよ。サクラを頼んだぞ。タダシ。今夜は、レモンスカッシュで祝杯だ! クエン酸は疲労回復に役立つからな。どんなに疲れていても毎晩、妹を満足させてやってくれ。わかるだろ」
「はい!」
俺はもう、それらしく返事するしかなかった。
命を危険に晒さないためには、ゆるさない君とサクラの強烈な願望をすべてゆるして聞き入れる以外に選択肢が残されていないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!