煙火

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 ドーン!   家が揺れる。天井板の隙間から砂埃が落ちてくる。 「行こう」  お兄ちゃんは帽子を被せてくれた。  外に出ると息苦しいほどの熱気と煙。夜なのに空は明るい。 「そっちはイヤ。父さんと母さんがいる方がいい」  私のワガママに小さく頷きお兄ちゃんはおんぶしてくれた。しがみついた背中はゴツゴツしていて汗びっしょりだった。なおさら暑くなった私は帽子を脱ぎ捨てた。もう必要ない。   「キレイ」 「キレイだね」 「あの星は母さん?」 「あれは違うよ」  人波をかき分け進んだ。私たちだけ違う方向へ向かっていく。  頭の上には機関車みたいな音を立てて飛行機がいくつも飛んでいる。飛行機からは流れ星のように白いひかりがザーァザーァと降ってくる。ひかりは炎となって地上に落ちる。   目の前に星が落ちた。地面に炎が広がる。  熱かった。体が溶けてお兄ちゃんとくっついた。 「熱いよ、痛いよ」 「ごめんね。助けてあげられなくて」 「熱いよ……痛いよ……」   手が、足が、髪が、顔が、燃えている。お兄ちゃんも燃えている。   さっき流れ星にお願いした。父さんと母さんに会えますようにと。もうすぐ叶う。 欲張りな私はもうひとつお願いをした。次は平和な世の中に生まれてきますように、と。 〈終〉  
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