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王命で輿入れが決まる前日の朝、起床すると同時に侍女のメイが旦那様がお嬢様を書斎にお呼びですのでお支度を急がせていただきますと他の侍女二人を連れてやってきた。
いつもならメイ一人でわたしの支度をするのに3人がかりとはこれは何かあるなと胸騒ぎがしたがされるがまま支度を済ませ父の書斎へ向かうと手紙を読んでいるようで私はお父様と声をかけた。呼びかけに気付いた父はアッシュグレーの髪が少し乱れて服も着崩れている、かなり慌てて支度したのだろう。
「あぁ、エレノアきたか。入りなさい」
「おはようございます、お父様。」
父のそばまで進むと今まで読んでいた手紙を私に見せながら、エレノアお前はひと月後にリタリス国のスティンデル侯爵家嫡男の正妻に輿入れが決まったと。
あぁ……。やっぱり的中した。
「お父様、私の輿入れとは?なぜ急にそのようなお話があがったのですか?」
「ひと月後に第三王女のローズレッド様がリタリスに輿入れするのは知っているね?」
「はい。リタリスの第2王子のシーザー様に輿入れするとか、なんでも隣国のアルナタとイザリスが今にも戦争になりかねないので巻き込まれないため、後ろ盾に大国のリタリスに王女様を輿入れさせてイスタリアは中立を示すための輿入れだとか」
「そのとおり。いつ攻め込まれるか分からない、我が国は資源と武力は隣国と負けてはいないが領土では劣る故戦になれば分が悪い。そこで王女の輿入れと我が国で採れる鉱石を輸出する代わりに後ろ盾になってもらうという話だ、しかし王女が輿入れ先が大国で今までリタリスへの交流がなかったことで嫁ぐことに不安になられていらしゃるため陛下がイスタリアの貴族の中からリタリスに嫁いでも我が国の政治的に問題がない家柄の令嬢3人を王女と共に輿入れさせようと王命を出されたのだ」
なるほど、なんとはた迷惑な王命だ。
王族に産まれたなら政略結婚など当たり前、しかも嫁ぎ先が大国で交流がないからと自国の令嬢を一緒に嫁がせるとはこの国の王族も終わっている。
「さようでしたか。しかしお父様、私はまだ成人もしていない子供です。そのような子供が妻として嫁ぐなんてあちらの侯爵家に失礼ではありませんか?」
私は精神年齢だけは高いと周りから言われるが実年齢は10歳になったばかり。それを盾にすればこの話も流れるだろう。私の代わりに輿入れする方には悪いと思うけれどまだ嫁ぎたくないし、この歳で侯爵家の嫡男の妻など無理だ。精神年齢が高いと言ったってどう足掻いたところで子供なのだから務まる訳がない。
「それには心配はないようだ。城からの手紙の他にもう一通入っていて、侯爵家からの手紙によるとぜひ輿入れしてくれとのことだ。」
「えっ?そうなのですか……。」
変態……?まさか幼女趣味なのでは?
ニヤニヤ嫌らしく笑っている男を想像してサーッと血の気が引いた。
「我が家は王命を受けるつもりだ、まぁ伯爵家が王命になど逆らえるわけもないしな。明日、城への登城命令がされている。エレノアも肝に銘じてそのつもりで。」
あぁ~~、私の人生終わった。
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フラつきながら書斎から出ると顔色の悪い私を見るなりメイが慌てて駆け寄り支えられながら自室に向かった私はその日一日部屋に籠もって食事を拒否し続け地獄の当日を迎えた。
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