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謁見の間でのあの茶番劇が披露される中、心の中で黒い何かがモヤモヤと燻っていた。 「はぁ…。最悪」 誇らしげに宣誓する父の横顔を見ながら本音が漏れてしまい慌てて口を閉じると、隣で囁くように(ほんとにそのとおりよね)と聞こえた。 その同意に驚きながらも、あぁ……この方も無理矢理嫁がされるのよね、私だけが辛い訳ではないのだと少し…ほんの少しだけ心のモヤがなくなった様な気がした。  **** 謁見後ひと月しかないため怒涛のスケジュールで輿入れの準備がなされまちに待たない王女の輿入れの日を迎えた。 王城から王女と共に馬車でリタリスへ輿入れするにあたり我が家へ早朝に迎えが来た。早々に荷物を積み込まれ最後の別れにと両親と姉のエレーナが見送りをしてくれる。 「エレノア、今日王女様とご一緒に嫁ぐことになるのだからくれぐれも失礼のないように気をつけるのよ。スティンデル家の方々にも迷惑はかけず、旦那様になるアーチボルド様には妻として良くお仕えするのですよ?」 「はい……。お母様」 アーチボルド・スティンデル。齢18歳にして次期スティンデル侯爵になる私の夫だが、会ったこともない人の妻になって良くお仕えするなんてできるわけないわ!幼女趣味の8歳も年上の男なんて絶対イヤ!と心の中で悪態を付きながら顔は微笑みを忘れない。 「エレノア、元気でね!着いたら手紙を忘れないで?絶対忘れないでね?グスン」 「レーナお姉さま……、絶対書くわ!忘れない!お姉さまもお返事忘れないでね?約束よ!お体に気をつけて、ダウナー様との結婚式には出れないけれど幸せを祈るから!」 「えぇ、約束。ありがとうエレノア!」 姉のエレーナは17歳で幼少の頃婚約した子爵家の次男で19歳のダウナー様と半年後に晴れて夫婦となりお父様が隠居をしたらルーザー家を継ぐ事になっているため、今回の輿入れが次女の私になったんだろう。同じ政略結婚でもお姉様達はお互いに好きあっているから政略結婚というより恋愛結婚に近い。羨ましい……。 「エレノア、お前は大人しく周りの子供より聞き分けがいい。あちらに嫁いでも変わらずに。体には気をつけて行ってきなさい」 「わかりました。お父様もお体には気をつけてください。」 ふーんだっ!私は聞き分けが良いんじゃなくて、そうしたほうが後々めんどくさくならないから言うこと聞いてただけよ!アッカンベー!! 「お別れはお済みでしょうか?そろそろ出発されませんと…。」 「えぇ、もう大丈夫です。では皆様行ってまいります。今まで育てて頂きありがとうございました。」 従者が扉を開けると同時に乗り込み手を数回振りすぐに深く腰掛け目を閉じた。
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