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交尾
夜になり、秋人がミサの自宅まで車で向かいに来た。これから二人は県を跨ぎ、車で三時間かけて京都まで赴く。
途中のパーキングエリアでミサは秋人と車中で抱き合った。夏場の薄着が自然とお互いをそういうムードにさせたのだろう。ミサは、秋人の筋骨隆々とした上腕二頭筋に長い髪ごと抱き寄せられることに、愉悦を覚えた。まだ夜の十一時なので駐車場には人がちらほらいる。
秋人はクワガタを捕らえるためのライトトラップ用の布を車内の窓に取り付けた。外から見られない二人だけの空間ができたことで、ミサは歓喜する。秋人の大きな口に吸い寄せられるように、唇を重ねて秋人のどっしりとした頭を抱え込む。
秋人はミサのジーパンの股の間に手を滑り込ませてミサが自らジッパーを下ろすのを促した。
途中の小休止のつもりが、秋人がクワガタのオスよろしく太い腕でミサを手放さなかったために、すっかり二人してイッてしまった。
なので、某神社に入山したころには二人は夢見心地で夜の闇もものともしなかった。秋人に至っては、チノパンから再び男性器がそそり立っていた。懐中電灯を手にミサは彼のあそこを照らして笑い転げる。
「もう! やめてよ、秋人! 一日一回じゃ満足できないわけ?」
「クワガタの交尾に季節なんか関係ないからな」
「もう、ふざけないでよ。メスは何度も交尾すると早く死んじゃうんだから」
自分たちをクワガタに例えてミサは爆笑した。ミサがクワガタであるならばとっくに寿命が縮んで死んでいることだろう。
秋人の前にもハヤトと乱雑な性交をしたことがある。ハヤトはインポで、そのくせ早漏で、ミサをイライラさせた。それどころか、ミサはハヤトの筆おろしをしたのだ。ミサの家に招いたのが失敗だったとミサは今でも後悔している。
服を脱いだハヤトの身体は女のように華奢で、卓球をやっているとはいえ、足ぐらいしか肉付きの良い筋肉はなかった。ミサよりも細く、肋は浮き出ており、凹んだ腹がミサをがっかりさせた。
そのくせ生意気にボクサーパンツはカウパーで湿っていたことがミサにはたまらなく許せなかった。この人は私のタイミングに合わせることができないという失望と、優位に立ちたいと言うミサの願望が砕けたことによる激しい憎悪にミサは怒鳴った。
「私より先にイクつもりじゃないでしょうね!」
案の定、ハヤトはミサのクリトリスを愛でる前に勝手に一人でイッてしまった。
ハヤトはミサに近づきたいと己を恥じていた。ミサには耐え難い屈辱だった。どこまでも自分勝手な男だと思った。ハヤトは一人でイキながらミサの髪に手を伸ばしてきた。その手は乳白色に汚れている。
「僕はミサが好きだ。その黒髪が好きだ。僕にも分けて欲しいぐらい好きだ。ミサは僕に人を愛することを教えてくれた。愛してるよ。ミサにもっと、もっと近づきたい」
「ふざけないで! あんたなんかと寝た私が馬鹿だったわ! 二度と来ないで!」
ハヤトはそのとき今まで見たことのないような鬼の形相をした。ミサは怖くなって、ハヤトを追い出した。それから一年、音信不通だ。
ミサはハヤトの言葉を反芻するだけで嫌気が差してきた。秋人の勃起したそれをチノパンの上から撫でて、早くクワガタを採集して楽しみましょうと促した。
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