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3.悪役令嬢は全力で役に立ちません!
私とルイス王子が、その声を聞いたのは、五月が始まったばかりの日。
どんよりと曇った放課後だった。
いつも通りルイスと並んで土いじりをしていると、何人かのご令嬢たちがやってくる音が聞こえた。
裏庭の少し手前……校舎裏のあたりだ。
「――庶民! またズルをしたでしょう?」
「ズルなんて……してません……」
ルイスと私は、顔を見合わせる。
これは……。
私は立ち上がり、木の陰から様子をうかがった。
同級生の令嬢たちが五人でよってたかって、ライティを追いつめてる……。
……ま、まあ、私には関係ないよね。
ライティとは下手に近づかないほうがいいんだし……。
見て見ぬふりをしておけば、それで……。
「そんなわけないわ。ズルをしないで、すぐにあんな成績が出せるわけないもの」
「そうよそうよ。実技はできるのかもしれないけれど、学科はごまかせないわ。どうせ、カンニングでもしたのでしょう!」
「あら、実技だって本当に力があるのか、わかりませんことよ。もともと、ズルをして入学した庶民じゃない。裏でどんな手を使っているのかわかりませんわ」
「あら怖い。さすがは、庶民ですわね」
「……わたし、ズルなんて、してません。学院に入学したのは……私の力を、この国のために役立てなくてはならないから……」
「出た出た、庶民のおふざけ。――いつまでふざけたこと言ってんのよっ!」
令嬢たちはライティの胸ぐらをつかんで、壁に押しつけ、頭をなぐろうとした。
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