3.悪役令嬢は全力で役に立ちません!

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 その瞬間、前世の記憶が、フラッシュバックする。 『――どうして、おまえだけがんばれないの?』  私はみんなの前で顧問に胸ぐらをつかまれ、壁に押し付けられた。  痛かった。苦しかった。……恥ずかしかった。  でも、だれも助けてくれなかった。  みんな、見て見ぬふりで……。  ……私は、ぐっとこぶしをにぎりしめた。  そして、ひとつ、深呼吸して――。 「あなたたち! なにしてるの!」  私は、令嬢たちの前に飛び出した。 「エミリアさま⁉」 「どうしてエミリアさまがここに……」 「……あっ、あれじゃないかしら? ほら……菜園部!」 「そんなのありましたわね、忘れてましたわ」 「……聞こえておりますわよ。お父さまに言いつけてもよろしくってよ?」  ああ便利だ、ハーディス公爵家の権力。  どうせ追い出される身だけれど、追い出されるまでは存分に利用させてもらおう……。
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