255人が本棚に入れています
本棚に追加
その瞬間、前世の記憶が、フラッシュバックする。
『――どうして、おまえだけがんばれないの?』
私はみんなの前で顧問に胸ぐらをつかまれ、壁に押し付けられた。
痛かった。苦しかった。……恥ずかしかった。
でも、だれも助けてくれなかった。
みんな、見て見ぬふりで……。
……私は、ぐっとこぶしをにぎりしめた。
そして、ひとつ、深呼吸して――。
「あなたたち! なにしてるの!」
私は、令嬢たちの前に飛び出した。
「エミリアさま⁉」
「どうしてエミリアさまがここに……」
「……あっ、あれじゃないかしら? ほら……菜園部!」
「そんなのありましたわね、忘れてましたわ」
「……聞こえておりますわよ。お父さまに言いつけてもよろしくってよ?」
ああ便利だ、ハーディス公爵家の権力。
どうせ追い出される身だけれど、追い出されるまでは存分に利用させてもらおう……。
最初のコメントを投稿しよう!