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Ⅶ
図書館の前の椅子に座り、瑞穂は目の前にいる男をにらみつける。
彼は、顔色一つ変えずに言う。
「そっか。じゃあ、死んだんだ、瑞樹ちゃん」
その態度。飄々としたその、素振り。
瑞穂は怒鳴った。目の前にいる、皇敢太に向かって。かつて瑞樹が言ったのと同じ言葉を口にする。
「あんたのせいよ!」
廊下に、その声が大きく響く。
敢太に死んでほしかったわけでは、ない。でも、それでも。
「あんたのせいで、瑞樹は死んだ!」
涙が出てきた。
あんなにも嫌いだったはずなのに。自分と違う道に進んだ瑞樹のことが。でも、今ここで、瑞樹を殺した敢太に再会して、わかった。
私、瑞樹のこと、好きだった。死んでほしくなかった。
あの時、中三の冬、瑞樹と同じになりたかった。昔のように。二人で、互いの傷を舐め合うような関係に、戻りたかった。
敢太は、やっぱり表情を変えない。ただ黙って、瑞穂を見ている。瑞穂が期待していた謝罪の言葉は、その口から出てこない。
瑞穂と瑞樹。
私たちは二度と、同じにはなれない。
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