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 瑞樹が私立中に行った頃から、瑞穂と瑞樹は少しずつ、離れていった。かつて、とても仲が良く、お互いを慰め合っていた二人は、もう影すらも見せなくなっていた。  瑞穂は、普通に進学した市立中で、楽しく生活していた。成績をよくしたり先生に気に入られなければならないのは多少大変でも、それすら楽しいことのように感じられて。瑞穂は友達を持ち、時にはどこかに出かけ、とても充実した暮らしをしていた。  それとは対照的に、瑞樹は毎日怒られた。殴られたり水に顔を浸けられたりする回数が、小学生のころとは比べ物にならないほど増えた。  どうして一番になれないの。なんで学年で十位なの。友達と遊ぶ暇があったら勉強したらどうなのーー。  瑞樹が行ったのはかなりレベルの高い私立で、だから一番になれなくても仕方がない、と瑞穂は思った。理不尽で、瑞樹がかわいそうだと思い、瑞穂は彼女を慰めた。けれど。  瑞樹から返ってきたのは、素っ気ない、そして棘を持った言葉だった。 「人の心配じゃなくて、自分の心配すれば?」  自分の耳を疑った。衝撃に固まる瑞穂に、瑞樹は続けて言葉を落とす。 「ああ、そっか、瑞穂、幸せだもんね。友達も彼氏もいて、成績もよくて、先生にも気に入られてるもんね? 心配することなんて、一つもないね。いいね。お気楽だね」  それは明らかに、瑞穂を嘲笑っていた。  瑞樹の中に、途方もない羨みと妬みが渦巻いているのを、瑞穂は知ってしまった。  その日から、同じ屋根の下に暮らしていても、二人は顔すら合わせる機会が減った。せいぜい、食事の時くらいだ。たまに会うと、ふいっと視線を逸らす。お互い部屋に籠りきりになることが多くなった。  瑞穂としては、瑞樹を嫌いになったわけではなかった。ただ、それでもやはり、彼女と自分は違うのだとわかってからは、彼女を避けるようになった。朝に玄関に行っても、瑞樹が支度をしていると、彼女が出て行くまで待とう、という気になる。  中学卒業が近づくころには、もう取り返しがつかないくらい、二人の仲は壊れてしまっていた。壊滅的、という言葉が相応しいだろう。
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