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ぼんやりとそんな事を考えていると、随分と険しい顔になっていたのだろう。
「お義姉さん、笑って!美しい花嫁がそんな顔、もったいないなぁ」
「どうしたのお姉ちゃん。日本を離れるから寂しくなったとか?」
葵夫婦はお酒のせいか、ハイテンションで絡んでくる。
心配そうに私の顔を覗き込む誠二さんには微笑みひとつ、葵達には軽くひと睨み。
「二人とも飲み過ぎじゃない?もう後はお水にしなさいね?」
「まだまだこれからなのに、ねぇ、お義兄さんも!」
ビールをグラスに注がれたら、真面目な誠二さんは必ず一口は飲んでいた。
そうやってかなり飲まされている。
「ちょっと、海里君!駄目だってば」
まわりにいた人達が、私達のやり取りを微笑ましそうに見守っている。
軽く笑い声も聞こえてきた。
「海くん、お姉ちゃんを怒らせると、後が怖いよ~?」
「だな!」
二人はじゃれ合いながら、大笑いしている。
この仲の良い二人を見せつけられるのも、今日で最後だ。
葵と海里はお似合いの夫婦だと思う。
私の中に芽生えた痺れは、気づかないうちに広がって、妹への愛情さえも痺れて麻痺させてしまった。
後悔や懺悔よりも、嫉妬や憎しみが痺れた先で待っている。
「お姉ちゃん」
葵が私の耳元で囁いた。
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