プロローグ

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プロローグ

 あなたには、いま会いたい人がいますか?  昔、好きだった人?それとも、昔の友達?疎遠になってしまったあの人?  もしその人にもう一度だけ会える電車があるとしたら、あなたはどうしますか?  とある夕方。  帰宅ラッシュで混み合う駅の中を二人の女子高生が話をしながら歩いていた。 「ねえ、知ってる?不思議な電車の都市伝説」 「電車の都市伝説?乗ったら最後、戻れなくなる電車とか?」 「違うよ。そんな怖い話じゃなくて、もっとロマンチックな話。しかも、この夕が丘駅にまつわる都市伝説」 「え?何それ?聞いたことない」 「知らないの?じゃあ、教えてあげる。でもね。その電車に乗るにはその前にクリアしないといけない事があるの」 「クリアしないといけない事があるの?」 「そう、誰でもその電車に乗れるわけじゃないの。選ばれないとダメなの」 「そうなんだ…。ねえ、どうやって選ばれるの?」 「まず始めにね、15日に夕が丘駅にあるコインロッカーに会いたい人の名前を書いた手紙を入れて鍵をしめるの。それでね、次の日にコインロッカーを確認して、その紙が無くなっていたらOKのサイン。その月の最終日の終電の後に、ホームで待ってると、不思議な電車がホームに来るんだって。そして、それに乗ると名前を書いた人に会えるの」 「それって誰の名前を書いてもいいの?」 「いいみたいだよ。遠くにいる人でも亡くなった人でも。選ばれれば、会いたい人に会えるらしいよ。あっ!でも、会いたい人との共通の思い出の品物を案内人に渡さないとその電車に乗れないだった」 「なんだ。じゃあ、芸能人とか無理じゃん」 「だね。あー、おしメンに会いたかった!」 「無理だね。でもさ、一回やってみたいかも。ねえ、それってどこのコインロッカー?」 「それがね。毎回変わるって言うか、どこでもいいっていうか。夕が丘駅にあるコインロッカーなら全部が可能性ありみたいな」 「何それ?」 「なんかね、その人が直感で選んだコインロッカーでいいんだって」 「その話、都市伝説にしても適当すぎない?」 「確かに…。でも、面白そうじゃない」 「そうだけど。あっ!そういえば、今日15日じゃん。もしかしたら、誰かやってるかもね」  女子高生達が笑いながらコインロッカーの前を通りすぎて行った。  彼女達が通りすぎたコインロッカーの扉を開け、一人立ち尽くす人影がある。そして、今日も誰かが名前を書いた紙を入れて、願いを込めて鍵を閉める。 「お願いします…。どうかあの人に会わせてください」
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