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「どうぞ・・こちらに」
リードが廊下を先に歩く。
その後ろを、グランビアの当主の手を取って、イーディスが歩く。
しばらくして、イーディスが声をあげた。
「リーディアン殿、私はちょっと用があるので、
当主を先に、部屋にご案内していただけるかな」
リードが振り向き、答えた。
「わかりました」
イーディスはグランビアの当主の手を取り、いささか強引にリーディアンの腕に絡ませた。
「・・後はうまくやれ・・リード」
「え・・・?」
イーディスは開いていた窓から、外に消えた。
開け放された窓から風吹き込む。
あの、甘く切ない・・香り・・だ。
記憶の封印が風で破られる。
「・・グリセラ・・?」
グランビアの当主のベールが風で外れた。
黒い髪の魔女は美しい・・
「あなたに・・どうしても会いたくて・・」
リードを見上げるグリセラの、アメジストの瞳が涙にあふれ、
すがるように腕をまわした。
切なくて・・
焦がれる想いがあふれる。
リードの閉ざされた記憶が、一瞬でよみがえった。
「ああ、グリセラ・・もう離さない・・」
甘い香りが立ち込める中、
二人は、魂を重ね合わすかのように、強く抱き合っていた。
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