寺子さんの秘密

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寺子さんの秘密

 放課後の高校。  クラスメイトは部活やデート、遊びの予定で浮き足立っていた。  その中で、私は一人帰る支度をする。  何故なら、高校二年生にして門限が決まっているから。  その時間は、17時半。  そして、今の時刻は16時半。  まだ余裕はあるけれど、特にやることもないので早々に帰って、寺子屋の子供たちに勉強を教えようと思う。  教室を出て生徒玄関に向かうと、2年生の下駄箱の前で、派手な先輩達が数人集まっていた。  皆、髪が明るくて制服を着崩している。 「すみません、通ります」 「あ、高嶺の寺子さんだ」 「やっぱり美人だわー。1回付き合ってみたい」 「分かるわ。でも、意外と性格キツそ」  ヒソヒソと話してはいるけれど、全部聞こえいてますよ。  会話の全てを無視して歩き出した時、輪の中心にいた先輩が道を塞いできた。  ピアスを着けた銀髪の人。 「…何ですか?」  この見た目のせいで、変な異姓から絡まれ慣れてはいるが…、それでも少し怖い。 「あのさ、これあんたの?」 「…違います」 「あっそ。引き留めて悪かったな」  「いえ、失礼します」  そう答えて、自分は学校を後にする。  しかし、冷静な態度とは裏腹に、背中は冷や汗が伝っていた。  何故あの人が、密かに書きためていた私の小説を持っているのだ。  咄嗟に否定したけれど、もし後々作者が私だとバレたら…。   「そんなの無理だっ!」 「何が?」  突然後ろから声が聞こえて、肩を跳ね上げる。 「これ、やっぱりあんたのでしょ」 「さっきの先輩…。違うと言ったはずです」  まさか、帰宅ルートが同じたったとは…。  どうやら今日は厄日のようだ。 「無理言うなよ。ノートの裏に小さく名前が書いてあるんだからさ、寺門莉子ちゃん?」  父の教えで、持ち物全てに名前を書くことが私の体に染み付いている。  それがまさか、こんなところで自分の首を絞めるとは…。  終わった。
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