感染する悪意

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「で、何があったんだ?話してみろよ」 ビールジョッキを片手に山村が俺に聞く。 話しても大丈夫だろうか。 でも、このまま独りで抱え続けるのはしんどい。 俺はグラスに半分くらい残っていた酒を一気に飲み干した。 「笑わないで、聞いてくれるか?」 山村もビールを飲み干すと、呼び出しボタンを押しながら頷いた。 「こないだ、飛び込み自殺見ちまっただろ?あの日から変な声が聴こえるんだよ」 「変な声?」 「許さない…って、最初は空耳かと思ったんだけど、最近はしょっちゅう聴こえるようになって、それで眠れないんだ」 「お前、それ、つかれてんじゃねぇの?」 「いや、確かに疲れてはいるんだけど…」 「違う違う、取り【憑かれて】んじゃねぇの?」 山村の言葉に背筋に冷たい汗が伝う。 「いや、でも、見知らぬおっさんだぞ?俺が押したわけでもないし、許さないとか言われる謂れはないだろ」 取り憑かれてる? 知り合いでも何でもないおっさんに? ちらっと見ただけで顔も覚えていない。
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