感染する悪意

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「出来るだけのことはしましたが...やはり、私では...」 住職が始める前と同じように深く頭を下げた。 「いえ、ありがとうございました」 礼を言って、数珠を返そうとして気が付いた。 透明だった数珠が黒っぽく濁っている。 よく見ると、所々、石が割れていたり、ひびが入っていたりしている。 「すみません...」 「いいんです、お役目を終えたということでしょう」 数珠を返し、要らないと言われたが料金を支払って本堂を出る。 「最後に聞きたいんですが、コレは一体何なんですか?どうして俺に憑いたんですか?」 俺の問いに住職は眉間に皺を寄せてしばらく考え、口を開いた。 「はっきりとはわかりませんが...強いて言うのならば、【悪意の集合体】です。一人や二人ではない、大勢の悪意が集まったもの...」 「貴方に憑いたのは...気の毒だが、たまたまでしょうな」 なんて理不尽な。 俺はやり場の無い怒りを抱えたまま、山村と別れ、家に帰った。
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