感染する悪意

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何が起きた? 状況が掴めずに呆然としていると、どこかからつんざくような悲鳴が聴こえた。 微かに鉄臭い匂いがする。 駅員が慌てた様子で何人も走ってくる。 「うわ、飛び込み?」 「朝やるなよ…」 「会社に連絡しないと…」 様々な言葉がプラットホームを飛び交う。 先頭車両の方からはシャッター音のようなものも聴こえてきた。 バスや他の路線に乗ろうと階段に走っていく人達の姿も見える。 『ただいま人身事故が発生した為、電車が遅延致します』 そんなアナウンスが聴こえるとあちこちからため息が起こった。 俺も会社に連絡しなければ…。 そう思って、スマートフォンを取り出すと後ろから肩を叩かれた。 振り返ると駅員が立っている。 「少しお話を聞かせて頂けますか」 俺も大きなため息をついた。 「会社に連絡だけしてもいいですか?」 それからたっぷり一時間以上、駅員室に拘束されて色々と聞かれた。 あぁ…完全に遅刻だ。 ...さない。 道すがら、何か聴こえて振り返る。 背後には誰もいない。 …気の所為か。 そんな事よりも早く会社に向かわないと。
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