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「すみません、気分が優れないので、今日は定時で帰らせて頂けますか?」
昼休みが終わり、部長に定時で帰りたい旨を伝えた。
「大丈夫か?あんなことがあったんだから、早退してもいいんだぞ」
そう言われても明日までに仕上げなければならない仕事もあるし、丁重にお断りしてデスクに戻った。
パソコンを起動したはいいものの、仕事が捗らない。
それでも蝸牛の歩みの如く、なんとか進めていった。
予定の半分くらいを済ませたところで終業時間を告げるチャイムが鳴る。
「宮部、帰っていいぞー」
部長の言葉に席を立つ。
あぁ...一日長かった。
「すみません、お先です」
荷物を纏めて、まだ仕事をしている同僚たちに挨拶をして、会社を出た。
駅で電車を待っていると、嫌でも今朝のことを思い出す。
スローモーションの様に線路に舞うおっさん。
空を切った自分の手。
大きな悲鳴と鉄臭い匂い。
ついさっきまで生きて、隣にいた人間が物言わぬ肉塊になった瞬間。
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