感染する悪意

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家の最寄り駅まで行ったら、更に思い出してしまうだろう。 今日は一つ手前の駅で降りて、歩いて帰ろう。 何事も無かったかのように、定刻通りに到着した電車に乗り込んだ。 今日は残業をしなかったからか、帰宅ラッシュで混みあっている。 殆ど身動き出来ない車内で出来るだけ小さく身を縮める。 ゆるさない。 はっきりと聴こえたその声に身を捩って周りを見る。 隣にいた女性が迷惑そうに顔を顰めて俺を睨む。 許さない? 誰を?俺? そういえば、あのおっさん、『許して』って言っていたな。 あの言葉を聞いていたから、こんな空耳が聴こえるのかもしれない。 今日は疲れた。 頭痛までしてきた。 熱い風呂に入ってゆっくり眠ろう。 一駅手前で降りて、重い足を引きずるようにして歩く。 大した距離じゃないけれど、今日はとても長く感じる。 「こんなに遠かったっけ…」 独りごちて足を運ぶ。 今日は人通りも疎らだ。 と言っても普段この道を通って帰るわけではないので、いつもの人通りがどうなのかは知らないが。
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