4人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのね、私ね、娘も欲しかったの。だから、お嫁さんが来てくれるかもしれないなんて思ったら嬉しくて。まって、環がお婿に行くことになるのかしら。まあどっちでもいいけども」
「ぶぶぶっ」
さらに多くのスイカの種が飛ぶ。ああ、スイカの名産地の出来上がりだ。母親の頭の中では、すでに幸せの鐘の音が鳴り響いている模様……おいおい。速いのは魔術を打つ速度だけではないのか。息子はついていけないぞ。
「環? 聞いてる?」
「ああ、もう、いい加減にしてくれよ……ほんと頼むから」
ぶっきらぼうに返した俺に少し口を尖らせる母親。なんだか気まずくなり、ため息をつきながらスイカの皮を置き頭をかく。傍に置いたスマホに目をやったとき、画面がパッと光った。
『珠希さん・よかったね。ご飯もお風呂も済んだから、いつでも大丈夫です。待ってます』
画面をなぞると、そのほかにも透子や森戸さん、先生からも返信が来ているようだ。スマホを片手に立ち上がった。
「あら、友達とお話しするの? 片付けはするから、行ってもいいわよ」
「……そうする、ありがとう。ごちそうさま」
と、取り敢えず聞くだけ聞いてみるか?『一緒に俺の実家に帰らないか』だなんて、なんだか告白するより緊張するけど。
俺は自室に戻ると一息つき、メッセージアプリの通話ボタンを押した。
「……あ、もしもし、珠希さん?」
最初のコメントを投稿しよう!