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1-1 始まりはいつだって唐突なんだ。
音もなく、匂いもない、暗闇の中に閉じ込められたとき人間はどうなるのか、なんて何かの本で読んだことがある。
その空間に何故いるのかという原因が分かれば多少心のゆとりが出来るかもしれないが、結局人間はまともな精神状態ではいられず、幻聴が聞こえたり、幻覚が聞こえたりと、発狂して、最悪死んでいくらしい。
実際自分がそんな環境下に陥ったことはないし、人体実験をしたとしてもその狂気じみた結果が表に出ることはなく、結局憶測で留まってしまう。
だが、その空間の中に一筋の光があったらどうだろうか。
人はその光に向かって走るのではないだろうか。
辿り着かないほど遠くに光があっても、必死になって、脚を動かし、手を動かし、身体を動かして。どうにかしてその光に辿り着こうと藻掻き続けるのではないだろうか。
例え、その光に辿り着くことができなかったとしても。
死に物狂いで、最後の希望と錯覚して。必死になって、命尽きるまで。
でももし、その光の先に辿り着いたとき。
暗闇の中にいたほうがマシだと思えるほどの絶望が待ち構えていたら、人間はどうなってしまうんだろうか。
「何があっても、生きてくださいね。リヒトさん」
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