1-1 始まりはいつだって唐突なんだ。

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 食堂に着いてもクロエの小言は続き、ディランは呆れてライアンを連れて「先席取っておくわ」と別の場所に向かう。俺もそちらに着いていこうとしたが、ディランの無言の圧によって、クロエと行動することにする。  クロエがこんなに怒っているのは俺が悪いってことは分かっているが、分かっていたとしても逃げたくなる。 「全く。私たちが探さなかったらどうするつもりだったのよ」 「どうするって、起きるまで寝てた?」 「何普通のこと言っているのよ。そりゃ人間、起きるまで寝ているわよ」 「じゃあ、なんなんだよ」  怒られながらも返事をすれば、更に怒られる。  自分が人を怒らせやすい人間だって言うことは分かっているが、クロエは度が過ぎている、とあたかも相手が悪いんだと自分に言い聞かせながら、夕ご飯は何を食べようかメニューを見る。  昨日も一昨日も、その前の日も連続でオムライスを頼み続けていたが、これと言って魅力的なご飯もなく結局本日もオムライスを頼む。  貴族がいて、平民もいる学校。  どんなに頭がよかったとしても、金銭的な面では埋められない差があり、それは食事の際に顕著に表れる。家の収入額によって頼めるメニューが決まっており、それは制服の袖の線の色で区別されている。 「夕ご飯とかの話よ。それに夜外にいたら、怒られていたわ」 「まあ、一食抜いたくらいどうってことないし、怒られるのは何時ものことだから」 「何時ものことって。これ以上評価下げてどうするのよ」 「もう下がる評価もない」 「何堂々と言っているのよ。 心配したらしたぶん馬鹿らしくなるわ」  睨まれて顔を背けられる。長い髪は一瞬広がり、落ちていく。  手の加えられた学校の制服は、スカートの裏側にレースがつけられており、ヒールの高いブーツによって俺より背が高い。また、ベルトにはしっかりと杖が括りつけられていて、いつでも魔法が使えるようになっている。  頼んでいたオムライス画出され、お盆に乗せる。  既に牛乳とサラダがお盆には乗っていて、 「……またオムライス?」 「うん。美味しいから」 「だからって連日そればっか」 「今日のはデミグラスソースがかかっているから、昨日とは違う」 「一緒でしょ?」 「そういうクロエだって、その野菜の詰まったゼリー好きだよな」 「テリーヌって言うのよ。食べたことない?」 「食べたことない」 「じゃあ、今日一口上げるわ」 「わざわざいいよ」  そんな不気味なもの、という言葉を飲み込み、ディランたちが確保していてくれた席に向かえば、彼らにも連日のオムライスに対して笑われる。  仕方がないだろ、頼めるものが既に制限されているんだから、なんて彼らに言っても貴族の人間からすれば、頑張らなかった先祖か悪いとかなんとか思われるような気がして、牛乳と一緒に言葉を飲み込む。
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