1-1 始まりはいつだって唐突なんだ。

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 貴族の中でも階級があり、最高位にいるディランとライアン。また、国境を守り続ける家の娘のクロエ。そんな人間と平民である俺、リヒト・パーカーが接点を持つなんて普通では考えられない。  そんな普通では考えられない関係が築けたのは、ここ、パルカノーラ王国の魔法科専門学校が存在していたからだ。学力テスト及びある一定以上の魔力を持った人間である“ルーロ”という血族であれば入学できる専門学校は、お金に関係なく入学することができる。  リヒトもそのうちの一人で、学力テストの結果は目も当てられないほどの酷い点数だったが、魔力量が同世代の人間と比べる桁違いということで入学が可能となった。  そして出会って親しくなったのが、ディラン、ライアン、クロエの三人だった。 「聞いていなかったんだけれど、今日は何していたわけ?」 「光魔法と闇魔法」 「は?」 「単体で使う分には困らなかったんだけれど。その二つの融合した魔法を使えたら、凄いかなって」  魔法の中でも上級に区分される光魔法と闇魔法。魔法を使えるルーロに生まれても必ず使える訳ではない魔法。なおかつ、その二つの魔法を融合させるとなれば更に難しくなることが分かるが、もし使える様になれば、他のどんな魔法で使えるのではないかと思い、練習と模索を始めた。 「凄いかなってあんた。そんなのできるわけないじゃない」 「そう?」 「そうでしょ? ただでさえその二つは難しいのよ。それに、光も闇もお互いを打ち消す魔法なのよ」 「だから、その打ち消しあう先に何かがあるかもしれないじゃん」 「そんなのないわよ」 「でも、それを証明した人はいない」 「できるって証明した人もいないじゃん」  全否定されたことに苛っとしてしまい、彼女の言葉に何度も言い返す。  頭の良い研究者たちが、何年も何十年も何百年もかけても見つけ出せなかった魔法を、12歳になる子供が探そうとしているなんて笑われることは分かっているし、出来ないと言われても仕方がない。  それでも、出来ないからと言って諦めるほうが可笑しい。 「何の話?」 「光と闇の統合魔法だって」 「……は?」 「今日、リヒトがやっていたらしいわ」 「馬鹿だろ」  二人が戻ってきたと思ったら、ディランの吐き捨てるような言葉で話が終わっていく。  彼の言う通り、馬鹿なことは間違いない。間違いないが、やらないことが正しいわけでもない、なんて声を荒げたところで再び馬鹿だと言われて話が終わるような気がして、怒りをオムライスにぶつける。  スプーンでど真ん中を割られたオムライス。チキンライスが顔を出したと思ったら、デミグラスソースに埋まっていく。スプーンに乗り切らないくらいのオムライスを持ち上げて大きな口で、オムライスを出迎える。  俺は間違っていないんだ、なんて想いながら食べたオムライスは、美味しいはずなのに全く味がしない。 「リヒト君は面白いことを考えるね」 「……今、二人に全否定されたけれど」 「だとしてもだよ。僕も色々探してみてもいい?」 「……ん」  ライアンは優しい笑顔で話し、先ほどまでの怒りが少しだけ落ち着き、息を大きく吐いた。    魔法の力だけ見れば学年一、いや学校一だと思っている。  実際、魔力量だけで学校に入ったのだから、そう思っても仕方がないし、何より他のルーロとは違い、リヒトは杖を使わずに魔法を使える。  魔法を使うルーロにとって、杖は人体に与える魔法の影響を軽減させるモノ。でもリヒトは有り余る魔力で常に自身に防御魔法を張っており、杖を使わなくても人体への影響はない。  そんなリヒトだからこそ、他のどんな魔法でもある程度使いこなせていた。   「何二人で話進めてるんだよ」 「え?」 「俺だって探すからな」 「ディラン、さっきリヒト君を馬鹿にしてたじゃないか」 「あ? 馬鹿が何しても何も生み出せないからだろ。俺みたいな天才がいれば話は変わる」  あまりにもディランの上からの物言いに呆気に取られてしまい、スプーンに乗っていたオムライスは皿の上に落ちていく。 「なに、二人とも。めっちゃ意味わかんないんだけど」 「意味わからないなら、入ってこなきゃいいだろ」 「は? 私もやるに決まっているじゃない」  そしてクロエもまた上から話始め、笑うしかなかった。
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