1-2.お前にとっての貴族は、そういうのだろ。

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「お、ま、殺す気か」 「失敗した」 「しっぱい、の一言で、おわりに、させるな、よ」  嘔吐くディランの背を摩りながら、今回の失敗を考える。  辿り着くまでは間違っていなかった。ただ防御魔法が弱かった。でもこれ以上防御魔法を厚くすると、今回ほどの速さはだせない。考えても自分の脳みそでは足りないことを察し、あとでライアンに相談するところまで思いつけば、ディランに頭を叩かれる。 「いくぞ」 「もう大丈夫なの?」 「大丈夫も何も、早く行かないとだろ」  顎で指された方向を見ると、多くの人間が我先にと人を追いやり走って逃げている。避難している人間なんだろう。降り立った場所が屋根だということで、今いる場所は人に押し潰されることはないだろうが、いずれここも火の手が回るのだろう。  食堂で見たときは明るいだけで何が起こっていたかは分からなかった。  でも、ここまで近くに来れば火の明るさだったことがよくわかる。  そしてもう一つ。  人々の叫び声や怒声。また、少し遠くからは爆発音が鳴る。 「……行くぞ」 「うん」  屋根の上を走り、人通りが少なくなった場所を狙って、道に降りる。  近づくにつれて、倒れている者が増え、家の燃える匂いが強くなっていく。また、剣と剣がぶつかり合う音も聞こえてきて、爆発音も次第に大きくなる。  びくびくしながらもディランの後を必死に追い、彼もまた迷うことなく前に進む。  何処に向かっているのか、叔父の上に向かっているのか。聞くことも憚られるような緊迫感は、気持ち悪く吐き出しそうになる。 「止まれ」 「っ」  曲がり角でディランに止められ、そっと覗けば兵士と誰かが剣を交えている。  彼らの周りに横たわる人間。眼を凝らせば、その人間には剣が刺さった者や血を流し続けるモノ、弱弱しく助けを乞う者たちがいる。  口を押えて彼らをまじまじと見てしまい、背後に立つ人間に気付くことが遅れ、ディランを突き飛ばし、手のひらを人間に向ける。 「っ」
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