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施錠する背中を見つめながら、彬は苦笑する。そらの頭を占めるカンチガイと妄想が、手に取るように分かる。
「ふふっ」
杞憂もイイトコ。
可笑しい位、彼女以外に僕の心は動かない。
他の皆は明日に備え、早めに退勤していた。アルバイトの藁科さんは電車が遅延して、遅刻してきた。僕は駆け足で、明日の変更点を説明した。
そらが忠告するように、藁科さんはチョイチョイ面倒臭い挙動をとる。
恋人に求めるものは何か、
恋愛のマンネリがデザインに悪影響与えないかetc
酔ったふりで繰り出される、マジどうでもいい話。
『それ、君に関係ないよね』と切って捨てたいが、そらは彼女のスキルを買っている。なので、僕は笑って我慢。
先刻も僕の話を聞きながら、服の胸元を摘みパタパタさせ始めた。
走ってきて汗かいちゃったアピール?
どうでもいい仕草に、笑顔も凍る。
興味ない女性に何も感じないし、欲情なんかしない。
『彬はメディアの執拗さを分かってない、スキャンダルは仕事に差し支えるんだから!』
そら、
君は僕にそう説教するけど、分かっていないのは君の方。
大分前に関係を解消したアリスの事を、いまだに僕の恋人だと思い込んでいる。
鈍感にも程がある!
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