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そらと俺の母校は、いわゆる難関大学。
優秀な人材に長けた社内には、卒業生が沢山いた。その中で彼女と歳が近い、若しくは同性の世話役候補はいただろうに、抜擢されたのは俺。
若干どころか肩の荷が重かった。
退官後は一切退き、地方に移住すると三ツ橋氏は折に触れ話していたので、八割がたオファーは桑野氏に決まっていた、
しかしチーム内の三ツ橋氏推しが、娘を介すれば氏も快諾してくれるのでは?、と邪念をもって俺に決定した様だ。
履歴書を見ると彼女とは在学期間もかぶってないし、学部も違うので話が弾むか心配だった。
社内の各部署を案内し席に戻る途中、軽く学生生活を含むプライベートを尋ねてみた。
『就職か院への進学か、実は迷っている』
と核心的な胸の内を、バカ正直に晒す彼女。
ディベートや厳しい交渉を個人法人問わず重ねてきた俺の話術に引き出されたとはいえ、『チョロい』というのが彼女の第一印象だった。
更に懇親会で、酒に酔いほんのり赤い顔で
『父の様になりたい』
と隣席の俺に夢を語る彼女。
父親の話が出たところで、俺は疑問に思ってた事を投げかけてみた。
『どうしてお父さんがいる大学に進学しなかったの?』
恥ずかしそうに彼女は、
『親の七光りとか言われたくないし、自力で色々学びたかったから』
だから父が教鞭をとる大学より一段上のレベルに、一浪して入ったと言葉を繋いだ。
夢見がちな側面、
勝ち気な性格、
彼女は話す度に、印象が変わる。次第に『面白い女』だと思い始めた。
物心ついた頃より常にモテた俺は、入社してから仕事に邁進し、あえて色事は遠ざけてきた。
巨額の金が動くデベロッパーのまわりに、情報欲しさ色々な人間がすり寄る。ハニートラップにかかり、出世コースから転落した社員もいたと聞いた。
美しい女、
可愛い女、
優秀な女、
従順な女、
エロい女、
俺の身の回りには色んなタイプがいた。特化した女もいれば、二つ三つ属性を兼ねている女もいた。
彼女の恋人だけに見せる顔を、俺は見てみたいと思った。
自分と違う、育ちの良い彼女に色目を使ったのは、俺からだった。
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