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背理
★
何で、今更…
まるで嫉妬してるみたいな口調。
以前は1ミリも『私』を見てなかったのに!
彼の関心は、『三ツ橋啓三の娘』だった筈。
インターンシップで、賢治が私の担当だと挨拶に来た時、すごくドキドキした。
ハマリ過ぎて私服が想像出来ない位、三つ揃えスーツが似合っていた。
低音で滑舌が良い説明は、耳通りが良く必要以上に頷いてしまった。
他の男性社員と比べて顎や手首が細く、神経質そうな印象も真面目に思えた。
その彼からインターン最後の日、今後も個人的に会いたいと言われた時は、本当に嬉しかった。
私は大人びた、悪く言えば老け顔の感情表現が乏しい子供だった。
両親が歳を経て授かった一人娘で、愛情深く育てられた。ただ幼心に、同級生の親より高齢な二人が、気恥ずかしいと思う事もあった。
そのせいか、友達との外遊びより父の書斎で読書するのに、多く時間を費やした。結果、人と気の利いた話をするのが苦手になってしまった。
彼はそんな本の虫だった私に、当意即妙な会話をふった。夢や将来について、又は若者特有の悩みなども聞いてくれた。
それは彼に割り当てられた仕事だったのに、ウブな私は簡単に恋に落ちた。
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