背理

4/4
前へ
/16ページ
次へ
★ 勃起していた。 そらの裸を見たせいか?! 優しく触り、そっと握る。 ただそれだけの僅かな圧でも、より強張る。 セルフプレジャーすらご無沙汰なのに、これがナカだったら…想像すると収まりがつかなくなりそうなので、浴槽に湯を張る。 最後にしたセックスは、いつだったか… 縁に腰掛け蒸気にあたりながら、ぼんやりと考える。 さっき自室でヘアバンドを探した時、引き出しの中でコンドームの箱を見た。以前買い置き、しまっておいた物だ。 この家で、 アレを、 彼女に、 使った事は無い。 知り合ってからずっと、俺は紳士的な彼氏を演じていた。 彼女が俺をそう見るからそう振る舞ったのか、それが楽だったからそうしたのか、今更どうでもいい。 当時お互い忙しく、デートやSNSでのやり取りも頻繁ではなかった。 だから予定が合う日があれば、食事やプレゼントを奮発した。建物好きの彼女の為に、車を借りて遠出をしたこともあった。 セックスは専ら、送りがてらの彼女の部屋かディナーをしたホテル。 玄関先での手荒く急いた行為も、 夜景を眺めつつ背後から奪う体位も、 卑猥な言葉を浴びせながら劣情を高める情事も、 彼女とした覚えがない。 処女だったそらとは、いつも眠くなる位丁寧な前戯から始まった。 不満がなかったと言えば、嘘になる。 しかし『頼りになる素敵な先輩』という幻想を壊してまで、エグいのしようとは思わなかった。 強いていうなら、彼女の部屋でするセックス。 『ここの壁、薄いから』と声を抑えながらも、あられもなく濡れる彼女。 口を押さえる彼女の手を外して、イロイロ意地悪するのが唯一愉しみだった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加