前提

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緊張が走り、身構える。 私、金森そらと遊佐彬が立ち上げたSKY(スカイ)デザイン事務所は、住宅街にある。モデルハウスも兼ねて、古くなった民家をリフォームした。 風通しと採光を重要視し、開口部を多くとったため、防犯対策は抜かりなくした。 警備会社から連絡が来てない。だから室内にいるのはセキュリティが許した人間。 ただ不審なのは、消灯したまま居残っていた訳。 「誰かいるの?」 眉をひそめて物音がした方に足を運ぶ。ミーティングルームの入り口に来たところで、勢いよく出てきた人影とぶつかった。 「ワオ!」 打ち合わせで使った書類やカタログが、腕から滑り落ちる。ぶつかった相手は藁科さん?! 「…す、すみません」 彼女のか細い声と、チラリと見えた泣き顔に『大丈夫?』と声をかけようとした時、 「そら?戻ったの?」 彬の声。そして、体を震わせ俯いてた藁科さんは、 「失礼します!」 と急いで去っていった。 彼女を追いかけるでもなく荷物を拾い集めるでもなく、呆然と立ち尽くす私の側に元凶がやってきた。 「お帰り。あ~あ、派手に散らかっちゃったね」 そう言いながら彬は、長身を折って拾い集める。彼の茶色くウェーブがかった髪と、つむじを見下ろしながら 「自重しろって言ったよね」 私の喉から普段より低い声が出る。
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