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道路側の植栽前で、僕らは別れた。そらは軽く手をあげ、瞬く間に背を向ける。
不機嫌な彼女は、極端に口数が少なく仏頂面になる。
ただし、それは気を許した相手のみ。心に隔たりがある時は、終始オフィシャルな笑顔しか見せてくれない。
山あり谷ありの共同経営で、お互い思っている事を包み隠さず話すようになった。いま僕の足元で咲くこの可愛いらしいランタナの様に、僕達の間の壁は低い。
だけど依然として、プライベートな悩みは話してくれない。事務所の女性社員のこぼれ話から、あの男と破局寸前なのは知っていた。
蛇の様に絡めとり、まだ彼女を離そうとしない恥知らずな男。
夫というバリアーは、そんなにも強固なのか…
遠ざかる彼女の背中を見つめながら、ずっと抱いている感情を噛み締める。『もう一歩、そらと進んだ関係になりたい』僕としては薄皮を剥ぐ様に、少しずつ距離を縮めてきたつもりだ。
なのに今夜も君は、あの男のもとへ帰っていく。
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