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「…何やってんの」
「わあ!」
脱衣所の引戸が開き、そらは急いでバスタオルを羽織った。
寝ていたと思ってた賢治が、頭に手を置き訝しげに見てくる。それもそうだ、風呂上がりパンツ一枚で洗面台の前で、そらはスクワットしていた。
「見ないで!」
「今更」
そう言うと、賢治は鏡裏の収納を開けて何かを探している。そらは手早く着衣しながら、
「また頭痛いの?夕飯も食べてないみたいだけど」
と尋ねた。帰宅後水を飲みにキッチンへ行ったら、食事をとった形跡がなかった。
「いや、大丈夫。それよりヘアバンド知らない?」
「あ!朝一緒に洗っちゃったかも?!」
賢治の背後にあるドラム式洗濯機の扉を開ける。乾燥まで一連の動作なので、備えて正解家電の一つだ。
「あった、あった」
中から見つけ手渡す。彼はそれを受け取り、
「随分遅かったね」
と聞いてきた。
「外で食べてきたから」
乾いた衣服をかごに入れながら、そらが答える。伸びた髪をかきあげ、バンドを着ける彼と鏡越しに視線がかち合う。
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