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「飲んできたの?」
尋問の様な問いが続く。
「うん、そんな気分だったから」
帰路、改めて藁科さんが明日来なかった場合の段取りを考えていたら、無性に空腹を感じた。遅い時間の飲食は体に良くないと思いつつ、最寄り駅前の居酒屋に寄ってしまった。だからさっきのスクワットは、せめてもの贅肉予防だ。
「…アイツと?」
「えっ、一人だけど」
賢治の青白い顔を見ていると、段々苛々してきた。
彼は在宅業務で殆ど家から出ない。
必要な物はネットで購入。
食事もアプリから注文する。
以前みたいなスーツ姿もここ最近見ていない。
1日の大半をルームウェアで過ごすから、素材やデザインなど着心地に煩い。そういった神経質な性格は変わらないのに、彼のライフスタイルは大きく変化してしまった。
後遺症で苦しむ姿を見てきた。
だから今の状態が、彼にとって最善の選択だったのは理解出来る…けれど、
バタンと大きな音を立て、洗濯機の扉を閉めた。
「もう寝るから、これ明日たたむわ」
あと何分かで明日になる。少しでも睡眠を取らないと、大事なイベントを乗り切れない。
「お休み」
鏡と向き合う彼を置いて、私は自室へ移動した。
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