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宝石箱をひっくり返したような煌めく夜景にも、仁科佐和子はすっかり飽きてしまっていた。
横浜、高層ビル最上階にあるBAR。
「『ひつじの夜をビールで洗う』は誰の曲だったかしら? 随分ぬるいシャワーね」
ドライマティーニのヒリつく口当たりでないと佐和子はウィークデイを終われそうになかった。
このひとりの時間は、心に浸透するタイプのストレスを洗い流すフライデーナイト・ルーティンワークといったところか。
「となり、よろしいですか?」
男が佐和子に声をかけてきた。
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