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「やぁ、ウィル。調子はどうかな?」 「……最悪だ」  少し前に見た配置と、同じ場所に顔がある。しかし、前より霞みは取れていた。しかも今度は笑顔だ。  あの後ロナルドの家に放り込まれ、睡眠導入剤を捻じ込まれ、気付いたら夜が明けていた。栄養不足による不調は否めないが、脳内の容量は少し空いた気がする。 「今から仕事に行くから、食事して寝といてよ」  仕事との単語が、懐かしい制服へと目を誘導した。当時の無念が蘇り、死んだと思っていた怒りも滲み出してくる。更には恐怖も一緒についてきた。 「…………私も同行して良いか? 気を紛らわせたい」  ゆえに、つい発言する。 「悲惨だからやめておいた方がいい」 「寧ろその方がいい」  一時的な麻薬でも、心を喰われる感覚に抗えるなら良いと考えたのだ。例え、副作用があったとしても。 「……そっか、なんならいっそ戻っておいでよ。ウィルの優秀さがあれば、きっとこれから何人もの人を救えるよ」  ロナルドは穏やかに手を差し伸べてきた。私はその手を取らず、自力で立ち上がった。
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