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 現場で他の刑事と合流する。馴染みの顔もいて、やつれたなと笑われたりした。だが、深入りはされなかった。  ロナルドから渡された装備を纏い、玄関を跨ぐ。充満する鮮血の匂いに、すぐ酔いそうになった。掃除屋の時より、鮮やかにジェシカを見てしまう。  それは、顔を上げた時、更に濃く上塗りされた。死の状況が、ジェシカとあまりに酷似していたのだ。 「綺麗な人だね」  状況に似合わない発言で、やっと被害者の顔を見る。死んでいたのは、つい昨日エリックと歩んでいた女性だった。  見間違いも疑ったが、焼きついた姿形が一致を認めている。脳内で100パーセントの文字が表示された。 自殺か。勿体無いな。データ入れるぞ。この女性の名は? アレックス・イルです――独りでに欹った耳が、情報を捉える。たった一秒の記憶と、自殺との情報が結びつかなかった。  その代わり、新たな可能性を見つけたが。   ――リック、もしかしてお前が。    一連の捜査が終了し、現場を出る。遺体は回収され、既にどこかへと消えていた。  逸る心を肯定するように、同僚と共にエリックが現れる。素早く私に反応し、駆け寄ってきた。 「ウィル、なんでここに!? 体調はもう大丈夫なんですか?」 「まぁ。急に悪かったな」 「大丈夫ならいいんですが……」  防護服越しの瞳が、やや遠くのロナルドを見やる。業務連絡に勤しむ彼の方は、エリックに気付いていなかった。 「アレックス・イル……」  聞いたばかりの名を、確実に囁く。向き直ったエリックは、首を傾げる意外反応を示さなかった。私にはそれが、裏付けのように思えた。 「リック。この後、時間あるか?」 「ありますよ。終わったら連絡入れましょうか」  普段通りの姿から、影が滲み出す。手のひらに力を込め、現れかけた震えを相殺した。 「頼む」
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