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エリックの件は、ロナルドにより自殺と設定された。結果的に私は、冷たい目一つ無い場所で、のうのうと生きている。
以前の住居を離れ、今はミドの町に戻った。魔物の住む川へは、五分あれば着く場所だ。
そんな場所にいながら縋らないのは、透明の枷が填まっているからである。事件後、ロナルドは私に言った。
「償う為にも生きろよ」と。
言葉の裏は容易に読めた。その上で態と表面通りに受け取った。
例え、どんなことがあろうとも。
遠い記憶と化していた、ノックの音が聞こえる。攻撃的な連打は興奮を暴走させていた。
「空いてるよ」
語尾が溶けると同時に、扉が内壁へ叩きつけられる。長方形の枠の中、現れたのはニコルだった。
背丈も大人並みになり、幼い面影一つない。しかし、私が彼女を見間違えることはない。
なぜなら、待っていたからだ。
逆光に消された表情に、あの日の微笑みがないことは容易に読み取れた。
「やっと見つけたわ……! ウィルが父さんを殺したなんて嘘よね!?」
「嘘じゃない、本当のことだ」
「なんで! なんでよ!」
微笑みを返答にする。ニコルは一気に距離を詰め、私の胸倉を掴んだ。
「許さない! 絶対許さない! 一生恨むわ!」
私を許さないでくれる誰かを。裁いてくれる誰かを。
自らの為だけに復讐した、悪人であるこの私を。
ごめんな。それから、ありがとう。
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