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 変化のない鑑定結果に、いつも以上に責められる日がある。そんな日は大抵、人目のない土地を徘徊した。そうでもしないと、狂気に食われそうになるのだ。  ふと、裏路地から現れたロナルドが目に留まる。こちらには気付いていないらしく、夢中で何かをメモしていた。  だが、刑事の勘か、餌に食いつくよう顔を上げる。すぐさま表情まで変え、嬉しそうに駆け寄ってきた。 「一人? 珍しいね」 「少しな。また事件か?」 「自殺だよ」 「そうか」  味のない遣り取りの中、気配を察する。笑顔が輝きをくすめる時、決まって話は始まった。 「……犯人探し止めようよ」  やっぱり。 「見つかっても見つからなくても、ウィルが辛いだけだ」  これが唯のお節介ならば、私は氷より冷たくあしらうだろう。しかし、真摯に向き合われては、そうも行かなかった。何度だって、のだと告げる必要がある。 「犯人を裁いてもジェシカが喜ばないのは分かっている。けれど動かずにはいられないんだ。分かってくれ」  私にとっての復讐は、人生における水のような存在だ。無ければきっと、たちまちの内に死んでしまう。  私だって、悪人の血に染まりたくはない。しかし、心を死なせない為には、命が欲する通り行動するしかなかった。  納得はしていないだろう。しかし、ロナルドは静かに頷き、一時撤退の姿勢を見せた。 「そう言えば、ついこの間、ミド地域でエリックくんを見たよ。何か頼んだ?」  代わりに妙な一件を持ち出して。
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