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「今回も酷いな……」  防護服を通過した異臭が、鼻から全身を畏縮させる。紛らわす暇も無く、景色を埋める色に圧倒された。  入室と同時に、目を刺したのは赤茶色だ。目蓋を染めるほど見ているが、未だ慣れない。 「ウィル、早く終わらせて帰りましょう。どこから行きます?」 「じゃあ、リックはカーペットから頼む」 「了解です」  相棒であり友であるエリックも、溌剌とはしているが逃げたいのだろう。早々行動を開始した。染まったカーペットは、バリバリと音を立て剥がされはじめた。    私たちは“掃除屋”である。内容は、事件、事故、自殺などが発生した現場の後片付けだ。  時間の割りに給料がいい――などとよく言われるが、屈強な精神がなければ人形と化すだろう。  特に、事件と自殺の多い自国において、掃除屋は過酷な仕事だった。そんな仕事に従事するのは金か奉仕精神か――少なくとも理由なく勤める物好きはいない。  無論、私も。
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