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要求
ここはとあるスーパーの駐車場の隅。
「近づいたら撃つぞ!」
「や、やめなさい!君はもう完全に包囲されている!」
「か、香奈子を離してください!やめてください!頼む……」
1人の男が香奈子と呼ばれる女性を人質に取った。
香奈子と呼ばれる女性は気絶しているのかピクリとも動かない。
恋人か夫と思われる男性が泣いて懇願する。
そこに集まった人が男を取り囲む。
「テメェら、警察ごっこしてんじゃねぇよ!遊びじゃねぇんだぞ?」
「な、何を言っている!私は非番なだけだ!」
「オメェじゃねぇよ!他の奴らだよ!ああん?」
非番の警官の周りからは取り巻きが消えておりよく見ると警官から離れていた。というか警官を盾にしている。取り巻きは男の気迫に押され逃げ出す者もいた。いつの間にか男性は消えていた。
「ほら!コイツがどうなっても良いのか!アイツらみてぇに退け!」
「くっ、仕方あるまい。──要求はなんだ!」
「三億円!コイツと交換だ!」
警官は男から離れて話す。
「わ、分かった!上に掛け合うから、待ってろ!」
警官が電話をした。
「よし、そのままその携帯をそこのカートに入れてこっちへ渡せ!」
見ると警官の隣にはいつからあったのかスーパーのカートが置いてあった。買い物客のものだろうか。ネギがビニール袋からはみ出ており鼻を突く。警官はビニール袋を地面に置き男に向けて力一杯押し出す。
少しずれたが男は携帯を手にした。
「よく聞け、三億円だ。人質と交換だ。ああ、そうだ。なんだと?警察はそんなこともできないのか。なら一時までに中島公園の駐車場──車の中に置け。灰色だ。奥の隅に置いておく。もしも──!分かったな!」
そうして電話を切り男はどこかへ去っていった。
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