4人が本棚に入れています
本棚に追加
「もしもし、圭悟? 聡だけど、今話してて大丈夫か?」
「今暇だよ」
「元気にしてるか? シン・ウイルスにやられてないか?」
「元気だよ。おまえもだよな?」
「ああ」
「しかし、電話とは珍しいな」
「まあ、圭悟と全然飲めなくなったからね。リモートワークだし、他の飲み会も中止だし、あまり人と話す機会がないよ」
「そうだな」
「自粛生活になって、一人の時間が増えただろ。そうしたら、なんだか故郷が懐かしくなってさ。同郷のおまえと話がしたくなった」
「何だか塩らしいな」
「急に昔のことを思い出したんだ。今まで忙し過ぎて忘れていたことをね」
「そうか、俺もそうだ」
僕達は今までしたこともなかった小学生の頃の話に花を咲かせた。
「覚えてるか? 黒板のチョーク入れの中にカエルの死骸を入れたの」
「あったなあ。若い女の担任がキャーとか叫んでさ。教室から泣きながら飛び出してびっくりしたよ」
「まさか泣くとは思わなかった」
「あの後、女子から攻撃されるし、他の先生から怒られるしで大変だったなあ」
「でも、あの頃いろんないたずらできて僕は楽しかった」
「俺もだ。そういえば、お前と絶交をしたこともあったぞ」
「ああ。けんかすると絶交とか言ってたな。女子同士のがよく絶交してたけど」
「で、いつのまにか仲直りした」
「絶交なんて言葉、今じゃ、聞いたこともない」
「なんだかんだで、大人になってもこうして話せるのは俺達、気が合ったってことだ」
「同意」
「それにしても、俺は自粛生活が板に付いて、結構楽しんでるんだぜ。元々インドア派だし」
「まあ、そう言われたら、僕も映画やドラマを観たり、本を読んだりして、かえって充実しているぐらいだ」
「お互い一人暮らしだから、人一倍健康に気をつけような」
「確かに。健康第一だ、本当に」
「じゃ、またな」
「じゃあ、また」
僕の心は安まった。やっぱりあいつと話すと違う。
最初のコメントを投稿しよう!